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2011年10月16日日曜日

果たして真意は那辺にありや?その3

今日は、13日の日経「経済教室」の「TPP参加の意義(下)」戸堂康之氏(東大教授)によって書かれた
論説をとりあげます。

結論から言うと、氏の論説は何の価値もなく、TPP参加の意義を無理やり作り出すために相当苦労したのだなとすら勘ぐってしまう。もう情けないの一言。こういう論説を撒き散らすのは害悪だ。

氏のいうポイントは3つ。

・輸出によって企業の生産性や効率性は上昇
・世界で戦えるのに国内にとどまる企業多い
・日本の農産物は高品質で輸入品に対抗可能

まず、「生産性」「効率性」の話。

企業は「金儲け」をするたに、海外市場に進出するのであって、「生産性」やら「効率性」やらを上げるためにそれをするのではない。そんなものは海外進出の結果であって、ましてやそれが企業の目標になるのか?したがって、海外進出が成功か否かを図るは、あくまでも利益が中心となるべきだと思う。生産性、効率性を追い求めるのがいかに「儲け」を阻害しているかは「ザ・ゴール」で明らかだ!

ついで2番目。

氏は、世界で戦えるのに国内にとどまる企業を「臥龍企業」と名づけ、いくつかの事例を紹介している。もちろん、そういう企業はたくさん世の中にあると存在していると僕も思う。ただ、そういう企業に対して僕がまず思うのは「円高で大変だな」ということ。もし、海外市場のために新たな投資でもしていようものなら、償却が大変だろうと心配する。氏はそのことについては一切触れない。

それに、そういう国内の企業が海外へ積極的に出て行きたいのなら、別にTPPなぞいらないのではないか?関税で多少有利になったとしても、為替リスクでそれは相殺されてしまうと思う。むやみやたらに海外、海外というのは無責任だろう。

氏は、こういうことを言う。

臥龍企業が目覚めて国際化することは、彼ら自身の国内生産や雇用を増やすばかりではなく、彼が海外で得た日本国内の他の企業にも伝わることで、日本経済全体の活性化にもつながる。

だから、それを後押しするためにEPA(経済連携協定)が必要であるというのだ(TPPはEPAの過激な形)。笑ってしまうのは、海外から得られた知識が他の企業に伝わる云々のところ。これは要するに企業ノウハウの公開ということで、こんなことがありえるのか?自社の優位性を揺るがすことをするわけがない!もう少しまともな作文を書けと言いたいわ。

そしてやはりこう言うのだ。

EPAの中でも、米国をはじめ環太平洋経済連携協定(TPP)は日本経済にとって特に重要だ。理由の一つは貿易拡大効果が大きいことだ。

として、その後に内閣府や経産省の試算した数字をそのまま挙げている。その検証もせずに・・・。何度もいうが、TPPに参加したって日本の輸出は増えない。参加国をみればわかるではないか。それにこの円高・・・。

しかし、それ以上に重要なのはTPPによる新しい知恵や技術の創出効果である。先進国である米国、オーストラリア、シンガポールなどが参加する予定のTPPでは、特にこれが顕著であるはずだ。実際、専修大学の伊藤恵子准教授の研究によれば。先進国向けの輸出を開始した企業は生産性を向上させるが、アジア向けの輸出についてはそのような効果はない。

これなど、何を言っているのかわからない。TPPによる知恵や技術の創出効果とは一体何を指しているのか、単なる願望ではないのか?またおかしなことに、日本とシンガポールは既にEPAを結んでいるし、この輸出額がGDPを上回っている特異な通商国家に今以上の何を輸出しようとしているのか示してもらいたい。また、TPP参加国の半数以上は農業国。国内の市場ははっきり言って非常に小さい。そんな国には輸出などできないでしょ。さらにいえば、それらの国に輸出したって生産性は向上しないらしい・・・。アジア=先進国ではないという定義だろうから。しかし、生産性なんぞ二の次だろう。そんな指標を持ち出すことがよくわからない。

最後は、日本の農産品は高品質云々であるが、これは氏の願望だろう。希望的観測に過ぎない。それも何のデータもなしにこう書いている。床屋政談ですな、まるで。

氏は、「臥龍企業」があるように必ず「臥龍農家」があるはずで、きっと世界に打って出る農家も現れるはずだというのだが、僕もその可能性は否定しない。ただ、それとTPPは何の関係もない。コメの輸入量が多い国はフィリピン、ナイジェリア、イラン、イラク、サウジアラビア、マレーシア、EUがあげられるが、この中でTPP参加国はマレーシアのみ。マレーシアが日本の高品質で高価格なコメを買ってくれるとは到底思えない・・・。たとえ、関税が0だとしても。

おそらく、氏は近年のバブル経済で富裕層が多くでてきた中国を想定して書いたのかもしれないが、中国は参加国ではないし、しかもいつはじけてもおかしくない中国の富裕層をターゲットとするのは、あまりにもリスキーであると僕は思う。それに、長いスパンを必要とする農業の投資先としては不適当だろう・・・。

そもそも、仮にも経済学の専門家であるならば、日本国内の高価格なブランド米が国内で消費できるよう日本国民の所得を上げることを考えるのが先ではないのか?

いやはや、あまりにもお粗末な記事でほんとにびっくりです。日経もこんなので「だからTPPは参加しろ」というのだから、お里が知れるというもの。


参考にした書籍は次回アップします。

今日はこれまで。









2 件のコメント:

  1. >笑ってしまうのは、海外から得られた知識が他の企業に伝わる云々のところ。これは要するに企業ノウハウの公開ということで、こんなことがありえるのか?自社の優位性を揺るがすことをするわけがない!もう少しまともな作文を書けと言いたいわ。

    企業間の技術伝播についてはあまたの研究者が実証的に検証しているので、「するわけがない」というならば、あなたがそれを実証すべきでしょう。(笑)

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  2. 匿名さん

    コメントありがとうございます。

    >企業間の技術伝播についてはあまたの研究者が実証的に検証しているので、「するわけがない」というならば、あなたがそれを実証すべきでしょう。(笑)

    なるほど、それは知りませんでした。私の勉強不足でした。蒙を啓いてくださり、ありがとうございました。ただ実証する気は毛頭ありません。そういうものだということがわかればそれで十分です。

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