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2010年6月1日火曜日

組織の不条理 その1


不合理な組織の代名詞として、かつての帝国陸海軍が槍玉に挙げられます。

一面では確かにそういった面も数多くありました。硬直した組織の弊害が至る所に見られたのは事実です。
例えば人事制度。帝国陸海軍は、戦時においても平時の序列を乱す事はしませんでした。序列とは士官学校(海軍なら兵学校)卒業時の成績、または陸軍大学(海軍大学)の成績順位です。これだけは頑なに守っていました。対する米国は、平時こそ学校卒業時の成績は重要視されましたが、戦時になると大抜擢も珍しくなく、まさしく適材適所の人事をおこなっていました。

今日の企業経営においても、反面教師として帝国陸海軍がなぜ破れたかを分析することは大変に役立つことだと思います。あの野中郁次郎も執筆者に名を連ねたベストセラー「失敗の本質」が有名ですね。
つらつら思いますと、我々はあの戦争から一体何を学んだのでしょうか?

ドナルド・キーンという日本で高名な米国人の日本文学者がいます。彼は、戦争中米国の日本語学校で日本語を学んだ語学将校でした。1940年、米国は戦争の1年前にあたるこの年、予想される異文化の国日本との戦争に備えて、大量の日本語を話す軍人の養成にとりかかります。そのために米国陸軍は日本語学校を作ったのです。確かこの前後ですね、あの有名な「菊と刀」がやはり敵国日本を分析するために書かれたのも。
米国は、この日本語を使える人間を使って、捕えられた日本兵の訊問だけでなく、日本兵の遺した日記や手紙などからも多くの情報を得ていました。

翻って、日本の状況はお寒い限り。占領した現地(南方地域)の行政を司るのに、現地の言葉はもちろん、英語はどう考えても必須です。敵国は米英ですから・・・。しかしながら、語学将校の養成を図ったということは全くなく、そういった正論を吐く人間に、「占領国に日本語を教えるくらいの気持が必要である」という精神論で押し切られてしまいます。こういった論調、今でも日本の組織で通用しそうだと思うのは僕だけでしょうか?

ちなみに、帝国陸軍の将校養成学校(陸軍士官学校)では英語は学べません。外国語して科目にあったのはロシア語、ドイツ語、中国語です。さらに言うなら、その士官学校で「対ジャングル戦」が教えられるようになったのは、昭和18年(1943年)、開戦後2年経過してからです。泥縄もここに極まれりですね・・・。

さて、前置きが長くなりました。

「組織の不条理」という本。副題に「なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか」とあります。
この本は、前述の「失敗の本質」とは異なり、不合理の代名詞ともいえる帝国陸軍の二つの作戦を分析するのに、新制度派経済学のアプローチを使って新しい見方を提供しています。曰く「合理的な選択をした結果、不条理に陥った」と・・・。

この本の内容と、僕なりの私見を書いていこうと思います。
今日はこれまで。

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