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2011年2月26日土曜日

226へ その3 人生至上の快楽

2月26日。

東京は季節外れの雪で、都心でも23日には32センチの積雪を記録している。この日もまた雪は降っていた。

部隊の先陣を切って、湯河原の牧野伸顕襲撃組がハイヤーで出発する。歩兵第一連隊、第三連隊、近衛歩兵第三連隊では深夜の非常呼集が響き渡る。



二月二十六日午前四時。各隊は既に準備を完了した。出発せんとするもの。出発前の訓示をするもの、休憩をしているもの等、まちまちであるが、皆一様に落ち着いて様の見えるのは事の成功を予告するかの如くであった。豊橋部隊は板垣の反対に会って決行不可能となったが、湯河原部隊はすでに小田原附近迄は到着している筈である。各同志の連絡協同と各部隊の統制ある行動に苦心した余は、午前四時頃の情況を見て戦ひは勝利だと確信した。ヱ門(営門)を出る迄に断圧(ママ)の手が下らねば、あとはやれると云ふのが余の判断であったからだ。村中、香田、余等の参加する丹生部隊は、午前四時廿分出発して、栗原部隊の後尾より溜池を経て首相官邸の坂を上る。その時俄然、官邸内に数発の銃声をきく。いよいよハジまった、秋季演習の聯隊対抗の第一日遭遇戦のトッ始めの感じだ。勇躍する、歓喜する。感慨たとへんにものなしだ。(同志諸君、余の筆ではこの時の感じはとても表し得ない。とに角云ふに云へぬ程面白い。一度やって見るといい。余はもう一度やりたい。あの快感は恐らく人生至上のものであらふ。後略)」
磯部浅一「行動記」

 今日はこれまで。




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