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2011年3月9日水曜日

中島飛行機という企業と父の体験再び

昨日、NHK番組「中島飛行機」のデタラメぶりをご紹介しました。今日は「中島飛行機」という当時のアメリカの航空機メーカーをも凌ぐ日本の超巨大企業についてご紹介します。

中島飛行機の創立者は、海軍機関大佐であった中島知久平という人です。彼は大正時代に海軍をやめ、独力で飛行機メーカーを立ち上げます。未だ飛行機の黎明期時代にその将来性を見越した先見の明と、それをもって起業した志は素晴らしいの一言。かつて、彼の伝記を読んだことがありますが、あまり詳しいことは覚えていません。

大東亜戦争中の海軍航空戦を一手に引き受けて戦った零戦のエンジンは、中島飛行機製でしたし、陸軍の「隼」を始め、戦争後半に登場して敵の心胆を寒からしめるほどの高性能を見せた「疾風」など、同社製の飛行機は、零戦の三菱とともに、帝国の航空戦力を支える双璧をなすものでした。

確か昭和17年だったと思いますが、創立者中島知久平は、「富嶽(ふがく)」という後のB29を上回る大型の6発(エンジンが6個)爆撃機を計画します。太平洋を越えてアメリカ本土爆撃を狙ったもので、爆撃後はそのまま大西洋を越えてドイツに着陸するという壮大なものです。試作機が完成したのかどうかは定かではありません(失念)。たぶん、完成はせず机上の計画だけで終わったとは思います。


中島知久平の孫は、中島飛行機の地元群馬選出の自民党の国政代議士でした。数年前に何が原因かは忘れましたが自殺しました。その時「おじいさんの顔に泥をぬった」と思ったことは明確に覚えています。


今日もまた父親の実体験をご紹介しておきましょう。

昭和19年12月30日に中島飛行機小泉製作所(工場)に配属された父は、海軍の陸上攻撃機「銀河」というものを作っていました。銀河というのは、爆撃も雷撃もできる攻撃機です。戦後アメリカが、そのスマートな設計思想に感嘆したといわれています。ちなみに「陸上」と対をなす言葉に「艦上」というものがあります。両者の違いは、空母から発艦できるか否かです。

さてその「銀河」ですが、父が配属された当初の昭和20年1月の月産生産予定機数は90機でした。それが4月以降、10~20機となり、7月になると5機となったそうです。部品供給の途絶です。これは部品を作る原材料そのものの欠如と、作っても運べないという2つの理由からです。

しかしながら、父はそれでも日本が負けるとは思ってもみなかったといいます。仮にも高等教育を受けている人間でありながら、やはり幼かったからなのか・・・。ただ、内心「これで戦争に勝てるのかなぁ?」くらいの疑問は感じていたといいます。

当時の工場の作業員は、父と同じような学徒か女子挺身隊で占められており、作業が終わった帰り道では、いつも女の子の話をしていたといいます。決して悲壮な気持ちも、国のために1機でも余計に飛行機を作ろうなどいう気持ちはなかったらしい・・・。

さらに言えば、8月1日に長岡(新潟県)が空襲され、ソ連の参戦、原子爆弾投下という事態となっても、「敗戦」ということは思ってもみず、「本土決戦近し」といわれても、別に何とも感じなかったといいます。

それぞれが年老い、昔の思い出話に花を咲かせる同窓会で当時の事が語られると、「おまえみたいなのがいたから日本は戦争に負けたんだ」と笑い飛ばされるそうです。

昨日も書きましたが、父は工場で働いているときに実際に爆撃を受け、戦闘機の機銃掃射から逃げた経験も持っています。毎日おなかも空かせていました。でも、その当時をことさらに貶めたり、恨んだりは一切していません。「それはそれで、それなりに楽しかった」と。若者特有の明るさというか、責任を負わない者としての気楽さというか、そんなところでしょう。ところが、同じ体験をした同窓生の中には、まるで正反対の感想を持つ人もいるようです。

巷間、流布される当時(大日本帝国時代)の言説は、そのすべてが父と正反対の感想で塗り固められています。現在の視点から過去を裁く視点一辺倒で、その視点からはみ出るもの(父の思い出のような)は、一切語られることはありません。そうして、暗く、過酷な生活のみが当時の戦争下の実相として語られている、そんなものは、あくまでも一面の事実でしかない。

鬱屈した感情やら、怒りやら、はたまた怨念めいたものまでも、歴史はそうした負の要素をすべて含んでいます。もちろん、近親者が戦死したり、空襲で家屋が焼かれ、家族が死んだり、そうした理不尽さの怨みつらみを、軍部や政府に怨念のように持っている人を僕は否定しません。むべなるかなとも思います。

しかし、そうした怨念の感情が何かしら「時代の正義」となって、過去を糾弾、断罪することには我慢がならないのです。

今日はこの辺でやめときます。

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