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2010年10月7日木曜日

組織能力とは まとめ2

 「組織能力とは」と大それた題目を付けたのには理由があります。


ある時、V字回復を成し遂げた日産とペリー来航から1年間無策であった江戸幕府を比べてみたからです。そもそも比較の対象が違い過ぎるかも知れませんが、そこからいろいろ考えました。


 カルロス・ゴーン氏は、日産の企業風土とは一切無縁な「外国人」。純粋に経営立て直しのために招聘された人物です。彼が打ち出した様々な方針や改革策を僕は細かく知りませんが、要するに、これまでの企業風土や組織がどうであれ、断乎として彼のやりたいようにやり切ったから成功をしたのだと思います。江戸時代、綱吉、吉宗、家治の将軍時代の諸改革も同様です。


 老中阿部正弘は、政権内の調整だけに1年を費やしたといっても過言でありません。彼は「開国止むなし」と考えていました。しかし、それを実現するには多くの抵抗勢力があり、その抵抗勢力との「和」を乱したくなかったのでしょう。彼には「断」という勇気が欠けていました。


 ちなみに、「和を以て貴しとなす」という聖徳太子策の憲法を持ち出して、「日本では昔から『和』が尊ばれてきた」というように考えるかも知れませんが、これは誤解ですね。その頃は「和」の精神等微塵もない世の中だったからこそ、聖徳太子は「和」ということを持ち出さざるをえなかったと考えるのが自然でしょう。僕の推測ですが「和」というものが重んじられるようになったのは江戸時代からだと思います。


 阿部正弘は、「和」にがんじがらめになり、「断」の勇気を持てなかった。


 カルロス・ゴーン氏は「断」の勇気を持ち、「和」を考慮しなかった。


 と、僕は結論づけました。そう考えると、所詮「組織」というものは、優れているとか、劣っているとかの対象にはならないと、つまり、率いる人の問題になると考えたわけです。間違っているかもしれません。でも、そこからまた進めます。




 例えば、世の中に「名経営者」と呼ばれる人が多くいますね。名経営というものは「人」の領域に属する事を表しています。そうして、「人」の問題ほど厄介なものはないと前回書きました。答えがないからです。名経営者の行った経営を真似しようとしても出来るものではありませんし、真似をしたからといって成功できる確証もありません。では、どうやってそれを今後の経営に活かして行けばいいのか・・・。その行きついた先のひとつが「組織」という社会学に属する領域であったのではないでしょうか。おそらくそこだけは真似ができると・・・。そうして、組織というものがクローズアップされているのではないでしょうか。


 前にも書きました。優れた人物が率いるから優れた組織となり、率いる人を離れて優れた組織などないのです。極論ですが、昨今の「人」に関わる言説の少なさから考えれば、このくらい書いてもいいでしょう。「学習する組織」と呼ばれるものにも「優れた組織には、組織トップの方針が完全に行きわたり・・・」とあったように思います。つまり、優れた組織は暗黙のうちに「優れたトップ」の存在を仮定しているようなものです。


 


 以前、「組織の不条理」という本の内容をご紹介し、4回に渡り書きました。


http://3and1-ryo.blogspot.com/2010/06/blog-post_01.html


 
 かつての日本陸軍など悪い組織の見本として書かれることが非常に多いですね。確かに、悪しき面は数多くありました。ただ、その中にあっても成果を挙げ、成功している事例もあり、同書では「組織の不条理を避けられた事例」が挙げられていますが、その避けられた原因はトップの差です。いうならば、トップの質でどうとでもなるのが組織であると言っているに等しい。


 いろいろ書きなぐりました。人がつくる「組織」云々よりも重要なことは、その「人」に焦点を当てることであるということを言いたかったのです。


 それなら、優秀だと言われる「人」になるにはどうすればいいのか、そしてどのようにして優秀な「人」を見抜き、育てればいいのかという問題に当然なってきます。


最初の、「人」になるにはどうしたらいいのかについてですが、これは不断の勉強というか学問というか、それしかないでしょうね。ソニー創業者の一人盛田昭夫氏は、「一般教養の大切さ」を言っていました。ビジネスとは一見関係のないもの、そういう見聞・知識が絶対に必要になる時がくると。


 それと、東洋的な伝統ですが「修身」ということが必要だと思います。先ずは「身を修める」こと、人格的に自らを高めること。これなくしては真のリーダーとはなれないと、アメリカの陸軍士官学校でも教育の最重要項目ともなっています。人格破綻の優れたリーダーなど存在しませんしね。部下を褒める技術とか、育てる技術にいかに優れていても、それが直ちに優れたリーダーであるとはなりませんし、やはり、「玄関入ったらすぐ出口」のようなリーダーには「?」がつくでしょう。人間的な幅とか、教養とか、酒席での会話だとか、もろもろの人間的要素においての合格点がリーダーには求められると思います。それには「こんなリーダーになりたい」という目標をイメージすることが肝心だと思います。




 創業経営者がその後継者を見極めることは非常に難しいようです。今日本で元気な会社は皆創業社長ですが、その2代目3代目の同じ成功は保証できません。創業者のつくった「組織」が成功を保証する事もできません。


 これについて、江戸時代の商家はどうであったのか、次回にご紹介します。


 おそらく次回が本当の最後になると思います。今日はこれまで。

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